
三木 健裕 助教
西アジア考古学・土器の学際的研究
専門は西アジア・南アジア地域の考古学です。とくに世界ではじめて農耕牧畜が始まり、数千年を経て、どのように人類史上はじめて都市や古代メソポタミア、インダスといった古代文明が生まれていくのか、そして西南アジア各地域で生まれた古代文明同士がどのような交流をしていたのか、研究をすすめています。上記の研究テーマを、イラク、パキスタン、オマーン、イランをフィールドとした発掘調査をとおして探っています。フィールドワークのほかにも、土器を対象に、岩石学、化学、ネットワーク科学などの研究手法を組み合わせた学際的研究を積極的に行っています。
西アジア、南アジア地域、広く海外の考古学、文化財、歴史に関心のある学生、また文化財を学際的に研究することに関心のある学生を歓迎いたします。
西アジア・南アジア地域の考古学
私は現在、主にイラク、パキスタン、オマーン、イランにて発掘調査を行っています。イラクでは、クルディスタン自治区に所在する遺跡、シャカル・テペの発掘に関わっており、都市と古代メソポタミアのはじまりを探っています。
パキスタンでは、未解読の文字をもつインダス文明社会(およそ紀元前2600〜1900年)を物質文化から解明するため、バンドー・クボー遺跡などから出土した土器資料を調査しています。
また銅の産地としてメソポタミア、インダス両文明社会と海洋交流を行い、現在のオマーンで栄えた文化に関しても、オマーン北部での踏査、発掘調査を通じて研究しています。


土器の学際的研究
フィールドワークから情報を得るだけでなく、遺跡からみつかったモノ、とくに土器から学際的手法をとおして多くの情報を取得し、当時の物質文化の研究を進めています。
たとえば薄片記載岩石学分析や理化学分析を行うことで、土器に含まれる鉱物や元素組成を知ることができます。こうした情報は、土器の製作技術や生産・流通を探るのに役立ちます。
ほかにも土器残存脂質分析、ネットワーク科学にも関心があり、当時の食や物質文化の広がりについて、新たな切り口から論じたいと考えています。

研究紹介動画
連絡先:tmiki.ae [at] keio.jp
活動報告&NEWS
2025年
・2024年度冬季ゼミ納会を渋谷でおこないました(2025.02.26)。
・慶應義塾研究者紹介動画で研究が取り上げられました(2025.02.10)。さまざまな視点からガクモンする【慶應義塾研究者紹介動画】シリーズのコンテンツで、「絡まり合いから西南アジア地域の人類史をさぐる」をテーマに研究を紹介しています。ぜひ1.5倍速でご視聴ください。
2024年
・オマーン、ワーディー・タヌーフ峡谷の遺跡群(およそ4000〜2000年前)での発掘調査に参加しました。大学院生1名が調査に同行しました(2024.12.27〜01.07)。

・立教大学で開催された日本オリエント学会第66回大会にて、学会発表を行いました(2024.10.13)。
発表タイトル:「南東アラビア内陸部ワーディー・スーク期の絶対年代:オマーン、ムガーラトゥ・ル=キャフ洞穴の発掘成果から」
発表者:三木健裕(慶應義塾大学), 板橋悠(筑波大学), 黒沼太一, 田邉幹太郎, 近藤康久
・論文を出版しました(2024.09.16)。論文タイトル:”Unravelling the function of funerary pottery vessels of the 2nd-1st millennia BC in the Dailaman Province (Iran) through typology, petrography, and organic residue analyses” (オープンアクセス)イラン北部の青銅器〜鉄器時代(約3500〜2500年前)の墓から発掘された土器の用途を考古科学的に分析し、特に植物油の容器として使用されていたことを明らかにしました。
雑誌:PLOS One
著者:Emmanuelle Casanova(フランス気候環境科学研究所), 三木健裕(慶應義塾大学), 宮田佳樹(東京大学), 西秋良宏(東京大学)
・書籍を出版しました(2024.09.02)。書籍タイトル『古代オリエントガイドブック (シリーズ「古代文明を学ぶ」)』「18 イラン2 ジーロフト文明と「マルハシ」の発見」と「20 ペルシア湾岸1 オマーン半島に栄えたマガン」の執筆を担当しました。
著者:安倍雅史、津本英利、長谷川修一(編)出版社:新泉社
・ドイツ、ライプツィヒ大学で開催された第26回ヨーロッパにおける南アジアの考古学・美術史学国際会議にて、学会発表を行いました(2024.09.16-20)。パキスタン・シンド州で実施しているインダス文明遺跡の調査成果です。
1)発表タイトル:”Pottery Production and Distribution in Sindh at Suburban Communities Before and During the Indus Civilization”
発表者:三木 健裕(慶應義塾大学), 上杉彰紀(鶴見大学), Brandi L. MacDonald(ミズーリ大学), Ghulam Mohiuddin Veesar, Tasleem Abro, Amin Chandio(シャー・アブドゥル・ラティーフ大学ハイルプル), Carla Lancelotti, Marco Madella(ポンペウ・ファブラ大学)
2)発表タイトル:”Farming the Urbanization: The Evolution of Urbanism in the Core Region of the Indus Valley Civilization”
発表者:Marco Madella, Tasleem Abro, Amin Chandio, Carolina Jiménez-Arteaga, Charusmita Gadekar, Carla Lancelotti, 三木 健裕(慶應義塾大学), Óscar Parque, Akshyeta Suryanarayan, 上杉彰紀(鶴見大学), Alessandra Varalli, Ghulam Mohiuddin Veesar
3)発表タイトル:”Ceramics of the Transitional Phase from Pre-Urban to Urban Phases of the Indus Civilization Focusing on the evidence from Bhando Qubo, Sindh, Pakistan”
発表者:上杉彰紀(鶴見大学), 三木 健裕(慶應義塾大学), Madella, Marco, Lancelotti, Carla / Veesar, Ghulam Mohiuddin, Abro, Tasleem, Chandio, Amin


・イラク・クルディスタン、シャカル・テペ遺跡(およそ8400〜5700年前)の発掘調査に参加しました(2024.08.20〜09.01)。

・パキスタン、シャー・アブドゥル・ラティーフ大学ハイルプルにて、インダス文明遺跡出土土器の調査を実施しました(2024.08.01〜08.20)。

・『三色旗』2024年08号(No. 855)にて、主にオマーンでの調査に関する研究紹介記事を寄稿しました(2024.08.01)。
・2024年度夏季ゼミ納会を三田でおこないました(2024.07.19)。
・南山大学で開催された日本西アジア考古学会第29回大会にて、川又記念日本西アジア考古学会奨励賞を受賞しました(2024.06.15)。

・南山大学で開催された日本西アジア考古学会第29回大会にて、学会発表を行いました(2024.06.15)。
1)発表タイトル:「イラク・クルディスタン、シャフリゾール平原におけるウバイド土器の地域性-シャカル・テペ遺跡出土土器の薄片記載岩石学分析を中心に- 」
発表者:黒田 峻平(金沢大学)、三木 健裕(慶應義塾大学)、下釜 和也(千葉工業大学)、小髙 敬寛(金沢大学)
2)発表タイトル:「南東アラビア前期青銅器時代ハフィート期におけるケルン墓の頂部構造について:オマーン・タヌーフ地区の事例をもとに」
発表者:黒沼 太一(東京外国語大学)、三木 健裕(慶應義塾大学)、田邉 幹太郎(東京大学)、近藤 康久(総合地球環境学研究所、総合研究大学院大学)
・論文を出版しました(2024.05.07)。論文タイトル:Petrographic and geochemical analyses of pottery from Wadi Tanuf, Oman: Approaching pottery production in south‐eastern Arabia during the second and first millennia BCE(オープンアクセス)オマーン、ムガーラトゥ・ル=キャフ洞穴(約4000〜3600年前)から出土した土器の鉱物学的・化学的研究です。
雑誌:Archaeometry 66/6: 1236-1254.
著者:三木健裕(慶應義塾大学)、黒沼太一(東京外国語大学)、B. L. MacDonald、M. D. Glascock(ミズーリ大学)、近藤康久(総合地球環境学研究所、総合研究大学院大学)